三たん地方開発促進協議会
 
◆ コラム ◆
大地の上にどっしりと建てられた渡邊家
古風なかまど

波の村に入ると、数多く残る入母屋の民家が昔話の背景になるような景観をつくっている。しかし近年、屋根はほとんどカラートタンで覆われてしまった。それらの中で、ひときわ目立つこげ茶色の茅葺屋根の民家が見えてきた。国指定重要文化財の渡邊家である。前庭で私たちを迎えて下さったのは当主雄一さん(71歳)とハルノさん(69歳)夫妻である。2人とも笑顔が美しい。

 低く葺きおろした屋根と目立つ壁、一目で古い家とわかる。この家は350年ほど前に建てられたと推定されている。屋根の最上部に乗る7基の棟おさえはこの家の格式の高さを伝えている。

 入口の敷居を跨(また)ぐと、暗い土間が広がる。その一角につくられたマヤからは、かつて黒毛の牛が潤んだ大きな目で客を迎えたことだろう。

マヤや石臼が見える土間

 渡邊家は西日本の農家に典型的な「田の字型」と呼ばれる4間取りである。私たちは土間に置かれた丸い踏石にくつを脱ぎ、まずシモンデと呼ばれる表側入口横の部屋に招き入れられた。机をはさみ、私たちは入口側、雄一さんは奥側に座った。この部屋では当主が主役であり、上席に座る。ところが最上の部屋に当る客間のオモテでは、当主と客の位置が入れ替わる。床柱を背にする最上の席に客が座ることになる。古い秩序が生きている。

 家族が食事と団らんの時を過ごすのは土間の奥に接した部屋のダイドコである。中央にいろりが切られ暖かい火を囲み、そしてちょっぴり目にしみる煙を気にしながら話がはずんだことだろう。当主だけが座ることができる横座は、玄関や勝手口から出入りする人や、マヤの牛の様子を見る位置にある。横座の背面は、寝室として使われるヘヤである。その入口の柱に掛けられた古風な時計が静かに時を刻んでいた。

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