私たちが提唱している「木彫フォークアート」とは、生活と親(ちか)しい美術作品ということで、例えば、茶の間に飾る、玄関に飾る、きばらない作品のことを指しています。
ものづくりは大別して、アート、工芸、民芸の3つの分野に分かれ、さらに、それぞれの中間に位置する作品というのもあります。私たちの手がけている「木彫フォークアート」というジャンルもアートではないし工芸でもないという中間的な存在にあり、美術界での認知度は低く、一般の公募選では入選しないといった状況下にありました。
しかし、10年前に1つの好機が訪れました。大屋町は、「但馬の祭典」というイベントの中で「木彫フォークアートおおや」の全国公募を始めました。もう今年で10回目になりますが、応募作品も毎年百数十点にのぼり、北海道から沖縄まで、日本全国から多彩でユニークな作品が集まります。この作品の中から毎年5〜6点を大屋町が買い上げ、既に50〜60点の作品を収蔵しています。年間1,000万円という金額は大金ですが、フォークアートの10年の流れを小さな町が持つことができる上に、展覧会で使った金の何倍もの価値と美術史を変え得るほどの資産を作り上げることができるわけです。おそらく、21世紀の早い時期に、フォークアートが(公的な呼び名は後に待たれるが)美術学的に認知されることは確実だと思います。
また、町内の古民家を改装してフォークアート美術館を建設する計画も着々と進行中です。こうした基盤ができれば、体験教室などを通じて後身の指導もできるようになります。実際に展覧会を見に来られるお客さんに「作り方を教えてほしい」とお願いされることもありますから、これからはぜひ若い人たちに注目される活動をしていきたいですね。
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